一般的に言うところのDUI (Driving under the Influence) 、つまり、飲酒運転で逮捕された場合、その代償は大変大きいものとなります。問題を解決するためには、刑事事件専門の弁護士とともに取り組む必要があるでしょうし、解決までには時間も、弁護費用等もかかるでしょう。ところが、米国ビザ保持者の場合は、悩ましい点はそれだけでは終わりません。飲酒運転による逮捕によって、お持ちの米国ビザステッカーが自動的に取り消されてしまうのです。
米国の警察機関に逮捕されると、その情報は、National Crime Information Center (NCIC) という機関のデータベースに登録されます。在外米国大使館および領事館に駐在する領事は、日々、米国内で逮捕された外国人のレポートを得ており、逮捕の情報を確認次第、ビザ保持者にE メール等を介し、ビザステッカーが取り消されたことを通達します。もし、ビザ保持者に帯同家族がいる場合は、その家族のビザステッカーも同様に取り消されます。米国領事館がビザ保持者の現在の連絡先情報を持っているとは限らず、通達が本人に伝わらない場合もあるため、中には、ビザステッカーが取り消されたことを知らずに米国を出国し、米国へ戻るためのフライトへの搭乗を拒否され、初めてビザステッカーが取り消された事実を知る人もいます。
ところで、DUIで逮捕されたことにより、自動的にビザステッカーが取り消されても、米国を出国する必要はありません。ビザステッカーが取り消されたとはいえ、米国での滞在までもが違法になったわけではないのです。ビザステッカーは米国へ入国する時に必要な書類ですが、ひとたび米国へ入国しますと、滞在をコントロールしているのは、Form I-94 (出入国記録、滞在期限情報) であり、ビザステッカーではありません。有効なビザステッカーを持って米国へ入国し、移民審査官の審査を受け、Form I-94が発給されている限り、そのForm I-94で認められている滞在期限までは、ビザステッカーの取り消しに関わらず、これまで通り、米国内に滞在、および就労が可能です。
もし、米国外に出国する場合は、新たなビザステッカーを、改めて米国領事館で申請しなくてはなりません。申請の際には、DUIで逮捕されたことを必ず申請書類上で明記してください。面接時には、領事からDUIによる逮捕について質問を受けますが、逮捕について隠したり、嘘をついたりし、それが虚偽とわかれば、米国への渡航は永久的に認められなくなりますので、くれぐれもご注意ください。
DUIによる逮捕後のビザステッカー申請では、一連のプロセスが完了するまで、数週間、場合によっては数ヶ月かかると考えてください。面接では、領事より、米国領事館が指定する医師の下で健康診断を受けるよう指示を受けます。これは、アルコール中毒ではないか、自分自身や他人の所有物、安全、生活に危害を加える恐れがないかを確認することを目的としています。健康診断では、アルコールの摂取量や精神面に関する問診、身体検査、採血が行われ、診断が完了次第、医師はForm DS-2054 と Form DS-3026を記入、米国領事館に提出します。医師は、何も問題がなければビザ発給を、問題があればビザ却下を推奨しますが、最終的なビザ発給への可否は、領事の判断に委ねられています。
DUIによる逮捕は、誤判定の場合もよく見受けられますが、刑事訴訟以上の成り行きがあることを忘れないでください。もし、DUIで逮捕された場合は、ビザステッカーがその時点で取り消されたとみなし、速やかに、経験豊富な移民弁護士に相談することをお勧めします。