海外の企業が従業員を米国に転勤させる方法の一つに、Lブランケットビザがあります。このLブランケットとは、海外にある多国籍のグループ企業から米国企業へ、企業内転勤者として従業員を異動させることができるプログラムです。このビザの主な利点は、個々の駐在員ごとにLビザ申請をする必要がなく、グループ企業全体で駐在員を異動させることが容易にできる点です。その上、通常、数ヶ月かかるビザ取得までの期間を、数週間、場合によっては数日にまで大幅に短縮できるのも魅力です。
Lブランケットビザは、海外のグループ企業から多くの従業員を米国へ異動させたいと考える、大きな企業グループ向けのビザです。企業グループとしてLブランケットを取得するには、米国移民局にLブランケット請願を申請しますが、申請資格は次のとおりです。請願者となる米国企業は、最低1年以上ビジネスを行っていること、米国企業、関連会社、子会社が米国内外合わせて少なくとも3拠点あること、米国の総売上高が少なくとも2,500万ドル以上あること、です。Lブランケットが承認されましたら、企業内転勤者となる従業員は、居住国の米国大使館または領事館でL-1ビザステッカーをすぐに申請することができます。
ビザ取得のプロセスが順調に進むと、あっという間に渡米の日がやってきます。米国に到着すると、空港で入国審査官が出迎えてくれますが、彼らが確認する書類は、以下のとおりです。
- ビザ、この場合はL-1ブランケットビザ
- Form I-129S:米国の雇用条件を記載した申請書類
- 到着日から6か月以上期間の残っているパスポート
入国審査官が入国を許可すると、Form I-94(出入国記録)が発行されます。 つまり、この時点で、合計4つもの書類があることになり、無論、すべての書類が必ず有効期限内でなければならないわけですが、実は、これら4つの書類は、多くの場合、それぞれで有効期限が異なっているのです。これが、L-1ブランケットビザが混乱を招く大きな原因となっています。例えば、空港の入国審査官は、駐在員が海外出張から米国へ戻り、入国審査を受けるたびに、3年間有効のI-94を発行することがよくありますが、このI-94の期限が、5年間有効のビザステッカーの期限よりも短い場合もあれば、逆にビザステッカーの期限が近くなれば、ビザステッカーの期限よりも長くなる場合もあります。また、Form I-129Sは、通常、発行日から2年または3年で失効します。そのため、万一、駐在員がこれら4つの書類の有効期限のいずれかひとつでも見逃してしまうと、移民法上では「不法滞在者」という扱いになってしまうわけです。
さらなる混乱の原因としては、これらの申請書類は大概、人事担当者が作成しているため、駐在員本人はこの複雑さを認識していないことがよくあります。もしも、人事担当者が有効期限をひとつでも見逃した場合、駐在員は帰国しなくてはならないということを、当の本人は知りもしない、ということもあるかもしれません。こうした非常に煩雑な書類の仕組みをきちんと理解するためには、それぞれの立場の関係者が互いにしっかりとコミュニケーションを取る必要がありますが、これは口で言うほど簡単なことではありません。
Lブランケットを持つ企業の人事担当の皆さん、これは、駐在員の生活、ひいては彼らの人生を大きく左右してしまう問題にもなりかねません。私たちは、ビザ申請の一連のプロセスを監督し、引き続き、全ての書類の有効期限をトラックすることで、駐在員の皆さんが法的に正しく過ごせるよう、常に確認しています。ご相談のある方は、どうぞお気軽にお問い合わせください。