移民や永住権保持者、その家族にとって、複雑な米国の移民制度を正しく理解することは決して容易なことではありません。まず、合法的な滞在資格を得ることが最初のハードルとなるでしょうし、それを維持し続けることは、また別のハードルとなります。 合法的な滞在資格を維持する上で欠かせない書類がForm I-94(入国記録)ですが、米国での滞在期限も記されている、非常に大事な書類であるのにも関わらず、実は見過ごされがちな書類でもあるのです。Form I-94の有効期間を「いつも同じ期間が与えられるに違いない」「自分の滞在期限はいついつまでと決まっている」と思い込んでしまうことで、予期せぬペナルティを受けたり、最悪の場合、滞在資格を失うことも、実は大いにありうります。そのような事態を防ぐために、Form I-94の情報を確認し、しっかりと管理することは、米国でビザ保持者として暮らしている以上、絶対に欠かせないことなのです。 私はEビザ保持者です。なぜForm I-94の期限が2年未満なのですか? Eビザ保持者として入国する場合、大概は最長2年の滞在期間が付与されます。しかし、入国時にパスポートの有効期限が、最長で認められる期間よりも短い場合、米国税関・国境警備局 (USCBP / the U.S. Customs and Border Protection) は、パスポートの有効期限に合わせてForm I-94の期限を設定することが非常に多く、そのため、2年よりも短い滞在期間となってしまうのです。 このポリシーを知らない人も多く、特に近年では入国時、滞在期限が記された入国スタンプをパスポートに押印しなくなったために、期限が一目では分からなくなりました。よって、入国次第、USCBPのウェブサイトからForm I-94をダウンロードし、滞在期限がいつまでかを確認する必要があるのです。 うっかり確認を忘れ、決して故意ではなかったにせよ、Form I-94の期限を超えて米国に滞在してしまった場合、現在のビザステッカーが無効になる、長期的に米国への入国が出来なくなるといった非常に重く悲惨な結果を招きかねません。例えば、Form I-94の期限を6か月以上超えて滞在した場合、米国へ3年間、さらに長く滞在した場合は、10年間の入国禁止処分が科せられることもあるのです。米国の移民制度では、「ステータス管理は自己責任」ですから、Form I-94を常に確認し、自分の身は自分で守るよう、しっかり心掛けて下さい。 ステータスを正確に理解し、適切に管理する Form I-94の期限が予想外に短くなるのは、パスポートの有効期限だけが原因とは限りません。残念なことに、人為的なエラーにより、Form I-94のウェブサイト上で、ビザクラス、滞在期限など、情報が誤って登録されていることがよくあります。しかし、USCBPの入力ミスであれど、USCBPが自主的に誤りを訂正することはありません。あくまで、個々人の責任においてForm I-94を管理していく必要があるのです。 入国後すぐにForm I-94を確認することがいかに大事か、お分かり頂けたと思いますが、もし、Form I-94に問題があった場合は、至急、次のように対処して下さい。 […]
最近、米国国務省のForeign Affairs Manual (FAM) が更新され、主たるビザ保持者が米国内でEビザへのステータス変更を承認された場合、その扶養家族が米国大使館および領事館からEビザステッカーを取得できるかどうかについて、具体的に言及していた文言が削除されました。この点について現在何も発表はありませんが、FAMの別のセクションを見ますと、主たるビザ保持者が米国内でステータスを変更した場合でも、その扶養家族はビザステッカーを取得する資格がある、と記されています。これが何を意味するのか、また、扶養家族はビザステッカーの申請をどのように進めるべきか、考えてみましょう。 扶養家族のビザステッカー申請に関するFAMの変更点を明確に 削除された文言を明確にするため、FAMの別セクションである9 FAM 402.1-6を見てみましょう。ここには、主たるビザ保持者が米国内で合法的なステータスを維持している限り、本人がビザステッカーを所持している・していないに関わらず、その配偶者や子供はビザステッカーを申請する資格がある、と明記されています。 この内容を具体的な例で考えてみましょう。例えば、F-1ビザ (学生ビザ) のステータスで滞在中の外国人が、E-2ビザへステータスを変更しました。必ずしも米国を出国し、E-2ビザステッカーを取得する必要はないため、この外国人は出国せず、結果、未だE-2ビザステッカーを所持していません。そして、米国外にいる扶養家族が、今後は米国で一緒に暮らすことを希望しているとします。この場合、扶養家族は、婚姻証明書、出生証明書、主たるビザ保持者のステータス変更の承認書(Form I-797, Notice of Action)などの書類をもって、E-2ビザステッカーを申請することが可能、ということになります。 他の例で言えば、ビジネスのためにB-1ビザ (商用ビザ) ステッカーを利用して入国後、F-1ビザにステータスを変更した外国人の扶養家族も、主たるビザ保持者のForm I-20 (学生資格証明書) を提示することで、F-2ビザステッカーを申請することができる、ということになります。* Form I-20 : 主たるビザ保持者がその教育機関に在籍中である、60日以内に在籍予定である、実習に参加中などを正式に証明する書類。 相互協定がもたらす扶養家族のビザステッカーへの影響 米国と各国との間には相互協定が締結されており、それぞれの国ごとに、発給されるビザクラス、有効期間、条件等が定められています。この相互協定が、扶養家族のビザステッカーの内容に影響を与えることがあります。例えば、主たるビザ保持者と異なる国籍の配偶者がEビザステッカーを取得する際、配偶者の母国もまたEビザ条約国であれば、その母国の相互協定に基づくEビザステッカーが発給されます。つまり、相互協定の内容によっては、配偶者のEビザステッカーは有効期間が制限されていたり、特定の条件が課せられることがあるのです。 ビザステッカーの申請をスムーズに進めるために 扶養家族のビザステッカーの申請やステータスの変更は、慎重な対応が求められます。ブランドン・バルボ法律事務所は、ご家族の状況、移民法や協定に基づき、最適な方法を共に検討し、ご家族が米国で一緒に暮らせるようサポートしています。ご質問のある方は、まずはお問い合わせください。
従業員の移民ビザ、つまり永住権をスポンサーする企業の要件のひとつに「支払い能力」があり、PERM Labor Certificateや移民請願書の提出時から、従業員が永住権を取得する日まで、決められた年収額を支払える財力があることを証明しなければなりません。永住権のプロセスは長期に渡ることから、プロセス中に従業員が転職することは珍しくありませんが、この「支払い能力」の要件は、以前の雇用主の元で永住権申請を開始し、在留資格/ステータス変更(Adjustment of Status/AOS)の審査期間中に転職してくる従業員のケースでも適用されます。 2024年、米国移民局は、従業員が永住権申請中に転職した場合のプロセスについて新たなガイダンスを発表しました。今回の変更は、米国企業や米国で働きながら永住権取得を目指す従業員双方に影響を与えるものとなりました。 2024年の新ガイダンスとは The American Competitiveness in the 21st Century Act (AC21) に基づき、Form I-140(移民請願書)が審査中の従業員も転職することができますが、米国移民局の新たなガイダンスによれば、転職先となる新雇用主は、その従業員が実際に勤務を開始する日からではなく、旧雇用主が請願書を提出した日(優先日。いわゆるPriority Date)から支払い能力があることを示さなければならない、としています。 従業員が新しい仕事にまだ就いていない場合でも、旧雇用主の元で永住権を申請した日付に遡って支払い能力を証明しなければならなくなり、雇用主は永住権申請中の従業員を雇用する際、今後は金銭的な考慮も必要になる、ということになります。 プロセスの仕組み それでは、具体的な例を挙げてみましょう。例えば、1月1日、ある従業員がA社へ就職、かつ、同じ日に、年収10万ドルの設定で永住権の申請書類も提出したとします。この時点で、A社は、申請書類が提出された1月1日から従業員の永住権が承認される日まで、年収10万ドルを月割りにし、その金額を支払える能力があることを毎月証明し続ける必要があります。 もし、その永住権申請中の従業員が、2月1日にB社に転職した場合、B社は、勤務を開始した日からではなく、A社で永住権の申請書類が提出された1月1日からの支払い能力が問われることになります。つまり、B社は当初の申請日からForm I-140請願書の審査期間、ひいては、永住権が承認される日まで、支払い能力があることを示さなければなりません。 注:申請料2,805ドルのプレミアム・プロセッシング・サービス(特急申請)を利用すれば、Form I-140請願書の審査に掛かる期間を15営業日に短縮できますが、プレミアム・プロセッシング・サービスを利用しない場合、審査期間は約10ヶ月掛かることもあります。 正しい選択をするために 雇用主の皆さんは、従業員の永住権をスポンサーするということが、いくつかの財政的および法的な義務を伴う点を予め理解しておく必要があります。ブランドン・バルボ法律事務所は米国ビジネス移民法の専門家として、スポンサー企業の責務を詳しくご説明し、必要な要件を満たすよう、支援しています。 転職してきた従業員、永住権のスポンサーシップ、または「支払い能力」に関する基準についてご質問がある場合は、弊所までお気軽にお問合せください。