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反米的な見解を理由に拒否?―米国移民局の新しい方針

概要:米国移民局の新たな政策により、INA第313条(a) の下、「反米的な活動」と判断し、それを理由に移民措置を拒否する、または取り消す権限が益々行使されています。「反米的」の基準は明確ではありませんが、近年、ソーシャルメディアへの投稿や抗議活動、政府や政策に対する意見などを標的にする事例が増えています。ビザ保持者は、米国国務長官がいつでもビザを取り消すことができること、そして、自身の発言が言論の自由で必ずしも守られているとは限らないことを理解しておくべきです。また、外国人を雇用する企業は、政治的な発言がいかにビザや滞在資格に影響を及ぼすかを従業員に理解させる必要があります。

米国移民局の新しい方針により、これまで長年あった法的権限が、実際に積極的に行使されていることから、ビザ保持者や申請者の間で不安の声が広がっています。INA第313条(a) は、個人が「米国政府に反する」行為に関与していると見做された場合、政府はその個人の移民上の措置やベネフィットを拒否または取消ができる、と定めています。最近のガイダンスが新たな法律として制定されるわけではありませんが、昨今の動向は、既存の権限を行使する方向へ積極的に移行していることを示しています。

これは、ビザ保持者、申請者、あるいは外国人を雇用する企業にとって、想像以上に深刻な内容かもしれません。

INA第313条(a) とは?

INA第313条(a) は米国移民法の条文のひとつで、政府に反する活動を支援したり、反米的な立場を取る個人に対し、政府が権利や資格を拒否できることを示す条文です。その文言は意図的に広範に記されており、最近では、この条文を引用する頻度が増えています。

米国移民局は2024年にこの権限がどのように使われるかを明確にするため、ガイダンスを更新しました。「反米的」と見做される活動、過激派組織との関係、さらには公の場での発言など、様々な問題に焦点を当てています。ここでの最大の懸念は、広範な権限を持つ米国移民局や米国国務省による裁量――つまり、「何が一線を越えるか」の判断は、米国移民局や米国国務省の裁量に任せられており、その判断に対して控訴することはほとんどできません。

米国国務長官はいつでもビザを取り消せる

米国国務長官は、これまでも一方的にビザを取り消す権限を持っていました。目新しいのは、その権力がどれだけ頻繁に、広範囲に行使されるようになったか、です。ルビオ国務長官の就任以降、政治的な言論、特にパレスチナ問題、米国の外交政策、政府への批判などに関する発言を理由にビザが取り消される事例が急増しています。

私たちも、明確な説明なしにビザを取り消すというメールを受け取った事例を目の当たりにしました。メールには「あなたのビザステッカーは取り消されました。速やかに帰国してください」といった内容だけが記されているのですが、多くの場合、出国義務が自動的に生じるわけではありません。とはいえ、ビザステッカーは失効していますので、米国をひとたび出国すれば、再入国はできなくなります。

「反米」とは何を指すのか? 

残念ながら、何をもって「反米的」と見做されるかは非常に曖昧で、判断のためのチェックリストがあるわけでもなく、政府もまた具体的な定義を示していません。つまり、判断する側の見方、受け止め方、考え方などに大きく左右される、ということなのです。

政府を批判するソーシャルメディアへの投稿、コンテンツの共有、平和的な抗議活動への参加であっても対象となることがあります。これらは犯罪ではありませんので、罪に問われることはありません。しかし、有罪無罪に関わらず、政府が「問題あり」と見做せば、それだけで十分な理由となるのです。

外国人に言論の自由はあるのか?

米国では、アメリカ合衆国憲法修正第一条によって言論の自由が保障されていますが、ビザ保持者や申請者の政治的発言に対しても同様に保障されるのか、裁判所は未だ完全には判断していません。

米国滞在中の外国人であっても、例えば、修正第四条および修正第五条は保障されています。ところが、修正第一条は曖昧で、増してや、その外国人の入国自体をそもそも認めるべきか否かが問題の場合は、なおさら曖昧です。

言い換えれば、たとえ合法的に米国に滞在していても、政府が、些細な発言から米国への姿勢に疑問を感じたり、危害の意図があると判断した場合には、ビザや滞在資格に影響を及ぼしかねない、ということなのです。

企業・人事担当者が知っておくべきこと

米国で事業を展開する日本企業にとっては、少し遠い話のように思えるかもしれませんが、決して他人事ではありません。従業員がソーシャルメディアで投稿・共有した内容が要注意と判断された場合、ビザが拒否されたり、取り消されてしまう可能性は否めません。

これは大げさな話ではなく、裁量を委ねられている審査官の目に留まり、気に入らないと判断されれば、INA第313条(a) を用いてビザが却下または取り消され、ひいては、E・L・H-1Bビザの外国人を多く雇用する企業であれば、他のチームメンバーやビジネス自体をも危険にさらすことにもなりかねません。オンラインでの発言や投稿のリスク、プライバシーの設定、そして、たったひとつの投稿が法的に影響を及ぼしかねない点を従業員にしっかりと理解させることがとても大切です。

米国政府は現在、INA第313条(a) の下、政治的な理由で移民上の措置を拒否する、あるいは、取り消す権限を積極的に、公然と行使しています。憲法上問題があるかどうかは別として、その影響は即刻かつ深刻です。

ビザ保持者や申請者、ビザをスポンサーする企業は、書面の規則を守るだけでは、もはや不十分です。言動が与えうる印象や感覚についても考えましょう。今まさに、受け手側のその感覚によって、物事が判断されているのです。ビザの却下・取消に関してご不明な点がありましたら、お気軽にブランドン・バルボ法律事務所までお問い合わせください。

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