特殊技能職 Professionals (H-1B)

H-1Bビザは、短期就労ビザの中で、最もよく知られているビザです。これは、米国政府が認める「特殊技能職」に従事するための、スキルや知識を備えた専門家を雇用したい場合に用いられます。この特殊技能職で必要とされる知識は、通常、4年制大学卒業 (学士号) もしくは同等の資格を通して得られる、非常に専門的な知識を意味します。つまり、4年制大学での専攻内容と、特殊技能職の職務内容が、関連していることが重要です。

特殊技能職への資格: 職務と申請者

特殊技能職としてみなされる職務とは

以下のいずれかの基準を満たしていれば、H-1Bビザで言うところの、特殊技能職としてみなされます。

  1. 学士号もしくはそれ以上の学位(もしくは同等の資格)を有することが、その職務に就くための最低必要条件である。
  2. 規模や業務が似ている他社、他組織においても、同様の職務については学位を求めることが一般的である。
  3. 雇用主は、その職務に就く従業員には、通常、学士号もしくは同等の資格を有することを求めている。
  4. 非常に専門的かつ複雑な職務内容であるため、通常、学士号もしくはそれ以上の学位を有することは不可欠である。

 

特殊技能職への資格を備えた申請者とは

以下の項目に該当する申請者は、H-1Bビザへの資格を備えている可能性があります。

  1. 特殊技能職の職務内容に関連する、米国の学士号もしくはそれ以上の学位を、認定された大学より受けている。
  2. 特殊技能職の職務内容に関連する、外国の学士号もしくはそれ以上の学位を有し、かつ、その学位は、米国の学位と同等であると評価されている。
  3. 州に関係なく、専門家として実務を行える資格、ライセンスを保持する。
  4. 米国の学士号もしくはそれ以上の学位の修了に値するだけの、教育、専門的なトレーニング、経験を有し、なおかつ、その専門分野で、責任ある職務を徐々に経てきたことで、専門知識を備えていると認知されている。

学士号もしくはそれ以上の学位を有しない申請者

特殊技能職の職務内容に関連する、学士号もしくはそれ以上の学位を、認定された大学より受けていない場合、カレッジレベルの教育、経験、業績を併せることで、同等の資格を備えていると、証明しなくてはなりません。

米国移民局のルールによれば、徐々に、より専門的なトレーニングまたは職務の経験を重ねた場合、その経験年数3年をもって、大学レベルの1学年分の教育に相当する、としています。この年数換算には、「カレッジレベルの一般教養と経験」など、どのような組み合わせも用いることができます。

H-1Bビザの年間発行数について

現行法では、米国政府の会計年度 (10月1日から翌年9月30日まで) ごとに、新規H-1Bビザを65,000枠まで承認できるとされています。このうち、6,800枠は、シンガポール国籍とチリ国籍の申請者用に割り当てられています。また、米国の修士号および博士号を有する申請者用には、別途、20,000枠が設けられています。

この上限枠が適応されるのは、新規にH-1Bビザを申請する場合です。同じH-1Bビザでも、H-1Bステータスの延長申請、H-1Bの修正申請、H-1Bの雇用主変更申請は、上限枠に関係なく申請することができます。また、高等教育機関および関連する非営利法人、非営利研究団体、米国政府の研究団体がH-1Bビザ申請のスポンサーとなる場合も、上限枠は適応されません。

新規のH-1Bビザ申請は、毎年4月1日より受付を開始しますが、申請者数が上限枠を超えた場合は、米国移民局にて抽選が行われます。そして、抽選で選ばれた申請者だけが、申請書類の審査へと進むことができます。

H-1Bビザ申請の手続きについて

H-1Bビザを申請するには、ポイントとなるステップが2つあり、まず、認可済みの労働条件申請書(Certified Labor Condition Application)を米国労働省より取得し、その後に、米国移民局に申請書類一式を提出します。

労働条件申請書 (Labor Condition Application / LCA)

米国移民局にH-1Bビザ申請を行う前に、必ず、米国労働省から、認可済みの労働条件申請書(Certified Labor Condition Application)を取得しなくてはなりません。また、雇用主は、以下の点について、宣誓しなくてはなりません。

  1. 雇用主は、その勤務地で同じ職務に就く他の従業員 (H-1Bビザ申請者と同等の資格を有する) に支払う賃金、もしくは、そのエリアでの、その職務に対する相場の賃金、いずれか高いほうの金額と、少なくとも同額の賃金をH-1Bビザ申請者に支払うこと。
  2. 雇用主は、同様の役職に就いている他の従業員の不利にならないよう、同等の労働条件をH-1Bビザ申請者に提供すること。
  3. H-1Bビザ申請者の勤務地において、H-1Bビザ申請者と同じ職種の新規雇用に対する、ストライキやロックアウトといった労働争議が起きていないこと。
  4. H-1Bビザ申請者の労働組合の交渉代理人に告知が渡されていること。交渉代理人がいない場合は、H-1Bビザ従業員の雇用に関する告知が、10営業日間、H-1Bビザ申請者の勤務地内の目立つ場所、少なくとも2箇所に掲示されていること。
  5. 雇用主が、H-1B依存企業、もしくは違反企業ではないこと。

H-1B依存企業の定義

  • フルタイムに等しい従業員数が25人以下であり、そのうち7人以上がH-1Bビザ従業員である。
  • フルタイムに等しい従業員数が26人以上50人以下であり、そのうち12人以上がH-1Bビザ従業員である。
  • フルタイムに等しい従業員数が51人以上であり、そのうち15%以上の割合でH-1Bビザ従業員を雇用している。

雇用主がH-1B依存企業もしくは違反企業とみなされた場合、追加義務を負う対象となり、以下の証言をしなくてはなりません。

  1. H-1Bビザ従業員を雇用するために、米国人従業員を解任していないことを証言しなくてはならない。
  2. H-1Bビザ従業員の雇用が、他の勤務地の米国人従業員の解任の原因になっていないことを証言しなくてはならない。
  3. 米国人労働者を雇用するために、その職務への求人活動を真摯に努めたことを証言しなくてはならない。

米国移民局へのH-1Bビザ申請

H-1Bビザ申請は、H-1Bビザ申請者の勤務開始日の6ヶ月前より申請することができます。H-1Bビザ申請を承認次第、米国移民局は、Form I-797という承認書を発行します。

H-1Bビザの有効期間

一般的なルールとして、H-1Bビザ保持者は、米国内に6年以上滞在することは認められていません。H-1Bビザ申請は、通常、3年ごとの有効期間で承認されます。なお、年間6ヶ月以上、米国外に滞在するH-1Bビザ保持者には、6年制限が免除されます。

H-1Bビザ保持者として6年間滞在後、新たな6年間分のH-1Bビザを申請するためには、まず、米国外で365日を過ごさなければなりません。ところが、H-1Bビザ保持者が6年の期間を超えて米国内に留まることのできる、「6年ルールの例外」があります。

H-1Bビザの有効期間を6年以上に延長する方法

AC21 (American Competitiveness in the Twenty-First Century Act) という条例によると、H-1Bビザ保持者として滞在を開始した日から5年目の記念日までに、米国永住権を取得するためのステップ、すなわち、労働認定証申請 (PERM) か、または、Form I-140 (移民ビザ/永住権の請願書) か、いずれかが申請されていれば、6年制限を超えて米国内に留まることができるとしています。

上記の条件を満たしている場合のH-1Bビザの延長申請では、1年ごとの有効期間で承認されます。もし、Form I-140は承認されているけれども、移民ビザ (永住権) の割り当てがなく、Form I-485 (在留資格/ステータス変更の申請書) を提出できない場合の延長申請では、3年ごとの有効期間で承認されます。

H-1Bビザ従業員の解雇または辞職

H-1Bビザの有効期間内に、その従業員を解雇する場合、雇用主は、帰国のための、エコノミークラス片道分の航空運賃を負担すると申し出る義務があります。これは、その従業員が、H-1Bビザの有効期間内に辞職する場合には該当しません。特筆しておきたいのは、H-1Bビザ従業員の雇用であれ、その雇用は一般的な雇用と同じであり、雇用主は、理由のあるなしに関わらず、従業員を随意に解雇できる、ということです。

不本意な解雇、もしくは自発的な辞職の後、H-1Bビザ保持者には、以下の3つのオプションがあります。

  • 他の非移民ビザへのステータス変更を申請する (この場合、最終勤務日から60日以内に、米国移民局へ申請しなくてはならない)
  • 他社より雇用される
  • 米国を出国する

なお、2016年に発表された、米国移民局の規定によると、H-1Bビザ保持者が職を失なった場合 (解雇、辞職、どちらも含む)、ステータスを変更、ステータスを延長、もしくは雇用主を変更するための期間として、最終勤務日から60日間の猶予期間を与えるとしています。

H-1Bビザ保持者の扶養家族

H-1Bビザ保持者の配偶者と21歳未満の未婚の子供には、H-4ビザが発行されます。扶養家族は、米国内で就学することはできますが、労働は認められていません。ですが、もし、H-1Bビザ保持者のForm I-140が承認を受けている場合、配偶者は労働許可証を申請することができます。

H-1Bビザに関する、その他の特筆すべき点

  • H-1Bビザ従業員の雇用形態は、フルタイムでもパートタイムでも良く、パートタイムの勤務時間に関する明確な規定はありませんが、一般的には週に20時間ほど、と捉えられています。米国移民局にパートタイムとして承認された雇用形態を、もしもフルタイムへ変更したい場合は、改めて、米国移民局に雇用内容を修正する申請をしなければなりません。逆にフルタイムからパートタイムへ変更したい場合も同様です。なお、米国移民局より、修正申請に対する承認を得るまでは、雇用形態を変更してはいけません。
  • 米国移民局の方針によれば、H-1Bビザ保持者は、週に最大20時間までであれば、どのような教育機関が提供する講習、講義であれ、受講しても良いとしています 。ただし、講習、講義の内容は、H-1Bビザの職務内容につながるものでなければなりません。
  • H-1Bビザ保持者は、パートタイムであれば、複数の雇用主の元で同時に労働することもできますが、いずれの雇用主も、米国移民局への申請を経て、H-1Bビザ従業員の雇用について承認を受けていなければなりません。先にも述べましたが、パートタイムのH-1Bビザ従業員の勤務時間は特に定められてはいませんが、週に20時間程度であることが一般的です。