2023年の初めに連邦官報に掲載された規則制定への提案書によると、米国移民局は、申請料の大幅な値上げや、プレミアム・プロセッシングの審査期間の延長について提案している、とのことです。これが現実に施行されれば、従業員の就労ビザを申請する企業に、大きな影響を与えることは間違いありません。
提案されている新申請料は、様々な請願書やビザのタイプに適用されており、中には最大2,050%もの値上げとなるものもあります。申請料の大幅な値上げにより、審査に掛かる時間を改善したり、米国移民局の職員がより良いサービスを提供できるようになる、と示唆していますが、残念ながら、米国移民局はこれまでにも同じ目標を幾度となく掲げてきましたが、 過去34年間、一度も達成されたことはありません。
現在、提案されている申請料の概要は以下のとおりです:
Form I-129請願書の申請費用
ビザクラス | 提案されている申請料 | 値上がり率 |
H-1B/H-1B1 | $460 から $780へ | 70% 増 |
H-1B 申請登録 | $10 から$215へ | 2,050%増 |
L-1 | $460 から$1,385へ | 201%増 |
E-1/E-2 | $460 から$1,015へ | 121%増 |
TN | $460 から$1,015へ | 121%増 |
O-1 | $460 から$1,055へ | 129%増 |
R-1 | $460 から$1,015へ | 121%増 |
これらの申請料値上げに加え、各Form I-129請願書には、 “Asylum Program Fee (亡命プログラム費 ) ”という名目の600ドルの申請料が新たに追加されます。提案書によれば、 “米国国土安全保障省では、障害を減らし、かつ、移民への給付を遂行するために全力で取り組んでいる” ため、この申請料をその資金に充てる、としています。
E-1またはE-2ビザ・ステータスを申請する日本人は、「日本に帰り、米国大使館へ205ドルの申請料を払い、ビザステッカーを申請する」もしくは「米国内に留まり、米国移民局へ460ドルの申請料を払い、ステータスの変更または延長を申請する」という2つの選択肢があります。現状の255ドルの差であれば、日本への航空券より安く、米国内で申請するほうが金銭的に有利です。しかし、申請料が1,015ドルに値上がりした場合、審査に相当な時間を要する米国移民局へ申請するよりも、日本へ帰り、米国大使館でビザステッカーを取得する方が合理的かもしれません。
また、H-1Bに対する値上げは、米国の大学を卒業する留学生に大きな影響を与えます。これまでは、H-1Bビザ申請の抽選に応募するための費用は10ドルでしたが、今後は抽選に応募するだけで、215ドルもの費用がかかることになります。
Form I-140/I-485請願書
Form I-140請願書は700ドルから715ドル(2%増)、Form I-485請願書は1,140ドルから1,540ドル(35%増)で、これらの値上がり率は比較的低いと言えます。ただし、例の600ドルの “Asylum Program Fee” は、すべてのForm I-140請願書にも適用されますので、雇用主がスポンサーとなる永住権の申請では、現状のほぼ倍の金額となる計算です。
Form I-907プレミアム プロセッシング
この提案書のもう一つの注目すべき点は、Form I-907プレミアム プロセッシングの審査日数に対する変更です。現状の15カレンダー日から、15営業日への変更が提案されており、カレンダー日で15日は単純に15日間ですが、15営業日となれば、ほぼ1ヶ月に相当するため、決して些細な変更ではありません。
先に述べましたように、米国移民局によれば、申請料の値上げは現状の遅延を改善するため、としています。確かに、ビザ申請、グリーンカード更新における遅延は早急に改善されるべきですが、審査時間が短縮されるという主張と、プレミアム プロセッシングの審査時間を延長するという提案は全く矛盾しています。
私、ブランドン・バルボは、以前、プレミアム プロセッシングの方針や規則を策定する委員会の委員を務めていました。当時、特に審査時間の短縮を主張していましたので、このたびの15営業日(またはそれ以上)に変更する提案には断固として反対です。
ブランドン・バルボ法律事務所では、移民法に関わる手続き等、企業の皆様のお手伝いをしております。米国移民法に関するご質問は、弊社までお気軽にご相談下さい。
*現在、上記の変更案に対して、公共からの意見を受け付けていますので、意見されたい方は、こちらからご提出下さい。