米国で滞在・就労するビザ保持者が海外へ渡航するということは、家族との再会、冠婚葬祭への出席、本社での会議など、大事な目的を伴います。しかし、最近の米国への入国審査は、米国での合法的なステータスを脅かす深刻な事態を懸念するほど、厳格化しつつあります。
米国大使館から有効なビザステッカー、もしくは、米国移民局から承認書(Form I-797)が発給されていても、米国への入国を実際に認否するのは、米国税関・国境警備局 (USCBP)、すなわち、空港やボーダーの入国審査官です。米国税関・国境警備局は、米国大使館や米国移民局の結論に捉われることなく、独自の基準で入国審査をします。現在、入国審査の基準はかつてないほど厳しさを増し、必要書類を揃えていても、些細なミスを理由に、別室へ送られ、尋問され、入国を拒否され、場合によっては、数日間にわたって拘束される事態までもが報告されています。
ビザステッカーは「入国の保証」ではなく「入国審査を受けるための許可証」
米国のビザステッカーは、「米国への入国を保証する」ものではなく、「入国審査官の審査を受けることが許されている」ものでしかありません。たとえ、米国移民局が承認書を、さらに米国大使館がビザステッカーを発給している場合でも、入国審査官は米国への入国を拒否することができるのです。
これは従来からのルールではありますが、最近、入国審査官は予想を超えるほど、その裁量を行使しています。適切に手続きをしている人々への攻撃的ともとれる質問、職務内容への疑念、長時間の足止めを私たちも目の当たりにしています。
さらに、グリーンカード(永住権)保持者に対しても、同様の扱いが報告されています。このように、米国に生活基盤のある方は、国外へ渡航する前に慎重に検討する必要があるのです。
リスクを最小限に。渡航する場合の注意点
海外渡航を避けられない場合は、事前の準備が非常に大事です。まずは、渡航スケジュールやフライト情報(出発日、便名、米国再入国予定日など)を、上司や人事担当者と共有してください。また、以下も重要なポイントとなります。
- 緊急時に必要な連絡が取れるよう、平日の日中に米国に到着するフライトを選ぶ
- ビザの申請書類で記載されている職務内容と一致する肩書きの記載された名刺を所持する
- 入国審査官が確認を求める場合に備え、上司の電話番号を控えておく
- 現在も米国法人から給与を受け取り、申請時と同じ内容・役職で勤務していることを証明できるように備える
- ビザ申請時の主要な申請書類のコピーを携帯する
米国税関・国境警備局からの電話連絡を想定
米国税関・国境警備局から雇用主へ確認の電話連絡が入る場合に備え、上司や人事担当者は、従業員の以下の情報について回答できるよう準備してください。
- 役職名
- 日々の業務内容
- 部下の有無や人数
- グロスの基本年収額
現在、私たちは、人事部がすぐに参照でき、入国審査官に素早く的確に伝えられるよう、従業員に関する情報を1ページ程度に要約した文書の準備を呼びかけています。この文書内には、従業員の氏名、役職、職務内容、給与、所属チームの構成を含めてください。ビザ申請時の書類の内容、従業員本人の説明、雇用主の回答に一貫性があれば、入国審査官からの信頼を得やすくなり、入国拒否のリスクを大幅に減らすことができます。
米国でのステータスを守るために、正しい選択を
現在の入国審査の状況を鑑みると、不要不急の海外渡航は可能な限り控えることが、米国でのステータスを守るための最善策と言えます。渡航のリスクに不安がある場合は、現状をよく理解する弁護士に相談してください。私たちは、入国地で何が起きているかを把握した上で、皆様のステータスを守り、維持するためのアドバイスを提供しています。まずは、お気軽にご相談ください。