ESTAで米国へ入国する前に知っておきたいこと

「ESTA(エスタ)」は便利な制度ですが、「ビザ不要=ルールなし」ということではありませんし、米国への入国を保証する「フリーパス」でもありません。意図せずとも誤った行動を取れば、米国税関・国境警備局(CBP)にマークされたり、尋問されたり、最悪の場合は入国を拒否されることもありえるのです。ESTAを利用して米国へ入国する場合、制限やリスクもあることを予め理解しておきましょう。

ESTAとは何か

ESTAは、「電子渡航認証システム(Electronic System for Travel Authorization)」の略称で、ビザの一種ではありません。これは、日本を含む特定の国の国民が、事前に何かしらのビザステッカーを取得せずとも米国を訪問することを可能にするシステムです。渡航前にオンラインで登録するだけですが、最終的に米国へ入国できるか否かは移民審査官の判断に委ねられています。

ESTAで認められている活動内容は、B-1/B-2ビザの内容と同じで、例えば、会議や学会への参加、観光は問題ありませんが、米国内での就労や学校への通学は認められていません。但し、B-1/B-2ビザとは異なり、滞在は最長90日までで、滞在期間を延長することは出来ません(ごくまれな医療上の理由をのぞく)。

ESTAで注意すべき「90日間の制限」

上述のように、ESTAを利用して入国する場合、1回の訪問ごとに最長90日までの滞在期間が認められます。このルールは絶対で、滞在期間を延長したり、在留資格を変更するといった申請は一切認められていません。もし、90日の滞在期間を超えて米国内に滞在した場合、現行のポリシー下では、生涯にわたってESTAの使用が禁じられます。

非常に限られた例外として、医療上の緊急事態により、一度きりの30日間の延長が認められたケースがありましたが、これには強力な証拠が必要で、決して自動的に許可されるものではありませんし、一般的な方法でもありません。

渡航の頻度に要注意

ビジネスや家庭の理由で、数週間ごとにESTAを利用して渡米する方々がいますが、複数の訪問を繰り返すと、入国審査官から質問を受ける可能性が高まります。場合によっては「渡航頻度が多すぎる。ビザを申請すべき」と指摘され、その時は入国できたとしても、次回の入国は拒否される可能性もあります。

ESTAでの訪問回数に関する規定はありませんが、とはいえ、自由に、何度でも、簡単に米国への入国が認められているわけでもありません。頻度が多かったり、滞在期間が長いと、入国審査官に警戒されることは間違いありません。

フレキシブルな帰国便チケットの用意

ESTAを利用することでよくあるトラブルは、入国審査官に「数週間の滞在です」と述べたにも関わらず、提示した帰国便の日付が89日後など、ずっと後になっている場合です。これは入国審査官に誤った印象を与えますので、口頭で伝える滞在予定と一致する帰国便を必ず用意してください。

入国審査官にとって、審査上、最も重要なポイントのひとつが、「必ず帰国することの確認」です。例えば、訪問者が「2週間滞在します」と述べ、それに沿った日付の帰国便を提示していれば、帰国の意思はあると見做してもらえるでしょう。

なお、後々、日程を変更しなくてはならない場合に備え、柔軟に変更できるチケットを用意することが賢明です。

電子機器は確認されます

入国審査官は、スマートフォン、ノートパソコン、その他の電子機器に保存されている内容を調べることができ、実際に頻繁に実施されています。もし、それらの電子機器内に、米国で不法に就労していることを示唆するメールやテキスト、ファイルなどが見つかれば、たとえリモートワークであっても、入国を拒否される可能性があります。よって、冗談でも、まるで就労しているように思わせる文面を残したり、書類を持ち込むことは止めてください。また、ソーシャルメディアにおいても、誤解を招きやすい内容の投稿は控えてください。

ESTAでの就労は違法で、これは絶対に守るべきルールです。たとえ、米国外にある外国企業のリモートワークであっても、物理的に米国内にいる状態で作業を行う場合は疑問視される可能性があります。ルール違反と判断された場合、その場でESTAが取り消され、その日のうちに帰国させられることもありえます。

ESTAは便利だが、リスクがないわけではない

短期の訪問で、きちんとルールを守れば、大変便利なシステムであるESTA。滞在期間を超えず、渡航頻度も多すぎなければ、米国へ入国する手軽な方法といえますが、ビジネスや私的な理由で、頻繁または長期滞在が必要な場合は、適切なビザを申請することをお勧めします。

入国審査官に「ルールを知らなかった」という言い訳は通用しません。彼らが重視するのは、目の前に見える事実、つまり、渡航履歴、本人の発言内容、電子機器内のデータの内容です。少しでも不審に見えれば、その場は入国できたとしても、それが最後のESTA訪問になる可能性もあります。

次回の渡米は、ESTAを利用するべきか、それとも、B-1/B-2ビザを取得したほうが良いのか、判断にお困りの場合は、弊所までご相談ください。余計な不安やトラブルなしに、正しい方法で米国へ入国できるよう、お手伝いします。

By Brandon Valvo