概要:レイケン・ライリー法(Laken Riley Act)の施行により、米国ビザ保持者が飲酒運転(DUI)や万引き等の犯罪で逮捕された場合、有罪判決の有無に関わらず、移民拘留が義務付けられることになりました。軽微な違反や犯罪であっても、長期間の拘留や強制送還の対象となる可能性もあるため、外国人労働者を雇用する企業は、このリスクを従業員に周知する必要があります。 これまでは、飲酒運転(DUI)や万引きといった軽微な違反や犯罪により、ビザ保持者が強制送還されることはほとんどありませんでした。多くの場合、罰金を支払い、保護観察を終えれば、米国での生活をそれまで通り続けられたものです。しかし、それはもはや過去の話で、レイケン・ライリー法の下では、軽犯罪でも、保釈なしの強制的な移民拘留、場合によっては米国からの国外追放にもつながり、たった一つの過ちから、数か月に及ぶ拘留や多大なる影響を受ける可能性があるのです。 レイケン・ライリー法とは? 2024年に米国下院で可決されたレイケン・ライリー法は、2025年にトランプ大統領によって署名、施行されました。これは、米国内で犯罪を犯した非米国市民に対する取り締まりの強化を目的としています。 重要な点は、窃盗、飲酒運転、特定の軽犯罪で逮捕された非市民は、罪の軽微さや、後に有罪判決を受ける受けないに関わらず、保釈なしで拘留される可能性があることです。 以前は、飲酒運転や万引きといった違反により、ビザが取り消されることはあっても、拘留にまで至ることはありませんでした。ビザが取り消されたことで渡航に制限が生じるものの、引き続き米国内で生活や仕事を続けられましたが、今後は、たとえ初犯で暴力性がなくても、拘留が義務付けられます。 飲酒運転の深刻なリスク 日本では飲酒しても電車などで帰れますから、飲酒運転は稀でしょう。しかし、公共の交通機関が限られている、車社会の米国では、初めて米国を訪れる人でも、リスクの深刻さに気づかないまま、飲酒後にハンドルを握ってしまうケースが後を絶ちません。 これまでは、飲酒運転でビザが取り消されても、日本へ帰国し、医療機関がアルコール依存症でないことを証明すれば、「やり直す」ことができました。しかし、レイケン・ライリー法の下では、飲酒運転で逮捕されたビザ保持者は、直ちに移民当局に拘束、釈放されずに拘留される恐れがあるのです。 たとえ、誰にも怪我を負わせておらず、法的要件を全て満たしていても、国外退去の手続きが進められることも考えられます。もはや、裁量的な審査や保釈は期待できません。 万引きなどの軽犯罪も深刻な結果を招く もう一つの大きな変化は、万引きといった、いわゆる軽犯罪に関するものです。今までは、初犯で、かつ、価値の低い物品の万引きであれば、拘束されたり、強制送還されることはありませんでした。 しかし、このレイケン・ライリー法の下では、たった一度の万引き容疑であっても、強制的な移民拘留につながる恐れがあり、学生ビザ(F-1)、就労ビザ(H-1B等)、EビザやLビザ保持者は、刑事事件が解決する前に拘留され、強制送還の対象となる可能性もあります。 つまり、刑事手続きと移民手続きが同時に進む間、数週間から数ヶ月にわたり拘留される可能性があるということです。 企業が知っておくべきリスク 外国人労働者、特にEビザ・Lビザ・H-1Bビザで働く従業員がいる場合、企業にも大きな影響を及ぼします。一人の従業員が犯した個人的な過ちが原因で、突然チームから離脱したり、業務に支障がでたり、さらには今後のビザ申請に影響が及ぶこともありえます。人事担当の方々は従業員に対し、一見軽い法的違反であっても、重大なリスクが伴うことを伝えるべきでしょう。今や米国政府は、国家安全保障および公共の安全という観点から、どんなに軽微な犯罪であっても「犯罪は犯罪」という姿勢で取り締まっているのです。 今後の展望 レイケン・ライリー法は、米国の移民取り締まりの在り方が大きく変わったことを示しています。ビザ保持者は、有罪判決がなくても、刑事事件に関われば深刻な状況に直面することを覚悟した上で行動しなければなりません。 逮捕されれば保釈は認められず、裁判中も拘留され、その後強制送還のための移民拘留所へ移送されることも、裁判官に会うまでの数か月もの間、拘留されることも考えられるでしょう。 たとえ長年米国で暮らし、働き、税金を納めていたとしても、一度の過ちですべてが破綻しかねない、米国刑法の厳しさを理解しなくてはなりません。 今や移民拘留は、暴力犯罪や国家安全の脅威となるケースだけではありません。この法の下では、万引きや飲酒運転などの軽微な違反も、強制的な拘留や国外追放へ直結します。米国ビザ保持者は、些細と思われる過ちが取り返しのつかない事態を招くこと、そして、もはや「やり直しのチャンスはない」ことを肝に銘じておくべきです。 レイケン・ライリー法が生活やビジネスに与えるインパクトに不安を感じる人事の方、そして、ビザ保持者の方は、ブランドン・バルボ法律事務所まで、お気軽にご相談ください。
概要:2025年、ESTA(電子渡航認証システム)の手数料は40ドルへ値上がりし、さらに同年10月1日には、250ドルのビザ・インテグリティ・フィー(Visa Integrity Fee)が新たに設けられました(現時点ではまだ徴収は始まっていません)。米国の移民手数料は、今後も値上げされる傾向にあり、企業やビザ申請者は、近い将来、さらなる費用が発生することを見越した上、予算を組む必要があります。 米国ビザの申請や渡航にかかる費用はすでに負担の大きいものですが、今後さらにその負担が増えるかもしれません。国土安全保障省(DHS)や米国移民局(USCIS)は、新たな手数料の導入や既存の手数料の値上げを進めており、その影響はESTAを利用する観光客の方々から、就労ビザを申請する企業まで、幅広くに及びます。とりわけ、2025年10月1日に導入された250ドルのビザ・インテグリティ・フィー(Visa Integrity Fee)なる新たな費用は、まだ施行はされていないものの、今後の実施に向け、注目すべき大きな変更点といえます。 ESTA手数料が40ドルへ値上げ 日本をはじめ、ビザ免除プログラム(Visa Waiver Program)に参加している国の国民は、ESTA(電子渡航認証システム)を利用し、ビザを取得せずとも米国への入国が認められています。2025年、ESTAの手数料は従来の21ドルから40ドルへ値上げされました。一見すると、20ドル程度の少額な値上げのようにも見えますが、実際はほぼ2倍となる大幅な値上げです。このように、近年の移民手数料は従来と比べ、値上げ率が高く、改定される頻度も多くなる傾向にあります。 250ドルのビザ・インテグリティ・フィーとは? 2025年10月1日、ビザ申請1件につき250ドルのビザ・インテグリティ・フィー(Visa Integrity Fee)という新たな手数料が設けられました。 現時点では政府側に支払いを処理・管理するシステムが整っていないことから、徴収はまだ始まっていませんが、施行されることはすでに決定しています。 この手数料は非移民ビザの申請者全般に適用され、その目的は「ビザ制度の整合性や適正化を支持するため」とし、具体的な説明はありませんが、企業や従業員、申請者にとって新たな負担となることは間違いありません。 手数料改定は今後も続く これまで長年にわたり、米国の移民関連の手数料は比較的安定していました。しかし、現在は、インフレ、政策の変化、行政再編を背景に、頻繁かつ予測不可能な手数料値上げの時代に入りつつあります。 就労ビザカテゴリーの申請者には直接的な影響はないかもしれませんが、最近、米国移民局(USCIS)は、亡命関連の申請や労働許可証(EAD)の手数料の値上げを発表しました。しかし、これらの値上げに止まらず、今後も手数料は頻繁に見直され、改定されていく見込みです。 さらに、既存の手数料の値上げだけでなく、ビザ・インテグリティ・フィーのような全く新しいカテゴリーの手数料が、ほとんど予告なく新たに設けられることも予想されています。 企業や日本企業にとっての影響 今後、日本の企業が従業員を米国へ派遣する場合、1件のビザ申請(Eビザ、Lビザなど)で、数百ドル単位の追加コストがかかるようになります。さらに厄介なのは、こうした変更が事前に周知されず、運用も不十分であることが多い点です。ビザ・インテグリティ・フィーを例にとると、2025年10月1日に規則が発効されましたが、支払いのシステムはまだ整っていません。システムが稼働すれば、手数料を遡って請求されたり、支払いが完了するまで案件を保留される可能性もあり、正直なところ、どうなるかはまだ誰にも分かりません。 本年度の従業員の米国派遣を計画する時には、手数料の値上げ分も見越した、余裕のある予算を組むこと、そして、新たな手数料が導入される際には事務的な混乱が起こり得ると、心の準備をしておくことが大事です。 ESTA利用者も無関係ではない ESTAを利用する旅行者にとっても、近年の傾向は無視できません。ESTA申請料も40ドルへ値上げされましたが、これまで比較的手軽に利用できた渡航オプションもまた、費用面での負担が徐々に伴いつつあることを意味しています。 そもそもESTAには大きな制約があり、90日以内の滞在、延長不可、加えて就労も認められていません。そこに手数料の値上げや、近年の入国審査の厳格化が重なり、ビジネスミーティングなどで頻繁に米国を訪れる人にとっては、もはやESTAは合理的な選択肢ではなくなりつつあります。 多国籍企業の人事担当の方々、初めてE-2ビザを申請する企業にも、伝えたい内容は同じです:ビザ費用は上昇し、その上、新たな手数料が十分な予告、説明、準備もままならないまま導入されていくーーこれが米国の移民料金制度の現状です。それでも企業や申請者は、こうした現状に迅速に適応し、対応していくしかないのです。 今後のビザ申請に向けたプラン、増加する手数料を見越した予算管理など、最近の動向や費用の全体像についてのご質問は、弊所までお気軽にお問い合わせください。
概要:米国移民局の新たな政策により、INA第313条(a) の下、「反米的な活動」と判断し、それを理由に移民措置を拒否する、または取り消す権限が益々行使されています。「反米的」の基準は明確ではありませんが、近年、ソーシャルメディアへの投稿や抗議活動、政府や政策に対する意見などを標的にする事例が増えています。ビザ保持者は、米国国務長官がいつでもビザを取り消すことができること、そして、自身の発言が言論の自由で必ずしも守られているとは限らないことを理解しておくべきです。また、外国人を雇用する企業は、政治的な発言がいかにビザや滞在資格に影響を及ぼすかを従業員に理解させる必要があります。 米国移民局の新しい方針により、これまで長年あった法的権限が、実際に積極的に行使されていることから、ビザ保持者や申請者の間で不安の声が広がっています。INA第313条(a) は、個人が「米国政府に反する」行為に関与していると見做された場合、政府はその個人の移民上の措置やベネフィットを拒否または取消ができる、と定めています。最近のガイダンスが新たな法律として制定されるわけではありませんが、昨今の動向は、既存の権限を行使する方向へ積極的に移行していることを示しています。 これは、ビザ保持者、申請者、あるいは外国人を雇用する企業にとって、想像以上に深刻な内容かもしれません。 INA第313条(a) とは? INA第313条(a) は米国移民法の条文のひとつで、政府に反する活動を支援したり、反米的な立場を取る個人に対し、政府が権利や資格を拒否できることを示す条文です。その文言は意図的に広範に記されており、最近では、この条文を引用する頻度が増えています。 米国移民局は2024年にこの権限がどのように使われるかを明確にするため、ガイダンスを更新しました。「反米的」と見做される活動、過激派組織との関係、さらには公の場での発言など、様々な問題に焦点を当てています。ここでの最大の懸念は、広範な権限を持つ米国移民局や米国国務省による裁量――つまり、「何が一線を越えるか」の判断は、米国移民局や米国国務省の裁量に任せられており、その判断に対して控訴することはほとんどできません。 米国国務長官はいつでもビザを取り消せる 米国国務長官は、これまでも一方的にビザを取り消す権限を持っていました。目新しいのは、その権力がどれだけ頻繁に、広範囲に行使されるようになったか、です。ルビオ国務長官の就任以降、政治的な言論、特にパレスチナ問題、米国の外交政策、政府への批判などに関する発言を理由にビザが取り消される事例が急増しています。 私たちも、明確な説明なしにビザを取り消すというメールを受け取った事例を目の当たりにしました。メールには「あなたのビザステッカーは取り消されました。速やかに帰国してください」といった内容だけが記されているのですが、多くの場合、出国義務が自動的に生じるわけではありません。とはいえ、ビザステッカーは失効していますので、米国をひとたび出国すれば、再入国はできなくなります。 「反米」とは何を指すのか? 残念ながら、何をもって「反米的」と見做されるかは非常に曖昧で、判断のためのチェックリストがあるわけでもなく、政府もまた具体的な定義を示していません。つまり、判断する側の見方、受け止め方、考え方などに大きく左右される、ということなのです。 政府を批判するソーシャルメディアへの投稿、コンテンツの共有、平和的な抗議活動への参加であっても対象となることがあります。これらは犯罪ではありませんので、罪に問われることはありません。しかし、有罪無罪に関わらず、政府が「問題あり」と見做せば、それだけで十分な理由となるのです。 外国人に言論の自由はあるのか? 米国では、アメリカ合衆国憲法修正第一条によって言論の自由が保障されていますが、ビザ保持者や申請者の政治的発言に対しても同様に保障されるのか、裁判所は未だ完全には判断していません。 米国滞在中の外国人であっても、例えば、修正第四条および修正第五条は保障されています。ところが、修正第一条は曖昧で、増してや、その外国人の入国自体をそもそも認めるべきか否かが問題の場合は、なおさら曖昧です。 言い換えれば、たとえ合法的に米国に滞在していても、政府が、些細な発言から米国への姿勢に疑問を感じたり、危害の意図があると判断した場合には、ビザや滞在資格に影響を及ぼしかねない、ということなのです。 企業・人事担当者が知っておくべきこと 米国で事業を展開する日本企業にとっては、少し遠い話のように思えるかもしれませんが、決して他人事ではありません。従業員がソーシャルメディアで投稿・共有した内容が要注意と判断された場合、ビザが拒否されたり、取り消されてしまう可能性は否めません。 これは大げさな話ではなく、裁量を委ねられている審査官の目に留まり、気に入らないと判断されれば、INA第313条(a) を用いてビザが却下または取り消され、ひいては、E・L・H-1Bビザの外国人を多く雇用する企業であれば、他のチームメンバーやビジネス自体をも危険にさらすことにもなりかねません。オンラインでの発言や投稿のリスク、プライバシーの設定、そして、たったひとつの投稿が法的に影響を及ぼしかねない点を従業員にしっかりと理解させることがとても大切です。 米国政府は現在、INA第313条(a) の下、政治的な理由で移民上の措置を拒否する、あるいは、取り消す権限を積極的に、公然と行使しています。憲法上問題があるかどうかは別として、その影響は即刻かつ深刻です。 ビザ保持者や申請者、ビザをスポンサーする企業は、書面の規則を守るだけでは、もはや不十分です。言動が与えうる印象や感覚についても考えましょう。今まさに、受け手側のその感覚によって、物事が判断されているのです。ビザの却下・取消に関してご不明な点がありましたら、お気軽にブランドン・バルボ法律事務所までお問い合わせください。