2017年、ドナルド・トランプ前大統領は、米国税制改革法案(Tax Cuts and Jobs Act: TCJA)に署名をしました。この法案には、企業が受けられた優遇措置のひとつに、減価償却費に関するものがあります。法案成立前、企業が固定資産の費用を計上する場合は、その資産の価値の減少を見積もり、耐用年数に応じて分割、それを減価償却費として会計処理をしていましたが、この法案により、企業は対象となる固定資産の減価償却費を即時に全額計上することができるようになりました。しかしながら、この措置は徐々に縮減され、いずれは廃止されることになります。 内国歳入法第 168(k)条により、E-2ビザ企業を含む多くの企業に認められた「即時償却」は、2023年以降、毎年20%ずつ段階的に縮減され、2027年以降は0%となり、最終的には税制改革法案が成立する前の状況に戻ることになります。次の各年1月1日以降に使用が開始される固定資産に対し、減価償却費を計上できる割合は、以下の通りです。 2023 – 80% 2024 – 60% 2025 – 40% 2026 – 20% 2027年以降 – 0% 法改正により、これらの割合が変更される可能性もありますが、E-2ビザ企業は、固定資産の減価償却費の計上は上記の割合で減少していくものとし、対策を考えたほうが良さそうです。なお、2017年9月28日から2022年12月31日までの間に使い始めた固定資産については、まだ100%の減価償却費を一度に計上することができます。 長期の減価償却は、納税額を高くしてしまうため、この措置の廃止は、企業の利益や収益に大きな影響を与えることになります。この措置では、例えば、2022年に20万ドルの高額な固定資産を購入、すぐに使用を開始した場合、予想される減価償却費の合計を一度に計上することができました。すなわち、耐用年数 (10年) として、その固定資産が50% (10万ドル) 減価償却されると見込めば、2022年度の税務申告時に、10万ドルの経費として会計処理できたのです。 ところが、同じ固定資産を購入、仮に2023年2月まで使用を開始しなかった場合、2023年度の税務申告においては、予想される減価償却費全体の80%までしか計上できません。つまり、見込まれる減価償却の額が10万ドルの場合、8万ドルを2023年度に計上し、残りの2万ドルはその後、数年に分けて計上していくことになります。 そして、同じ固定資産を2027年1月1日以降に使用を開始する場合、実際の減価償却費のみ計上でき、予想される減価償却費を追加で計上することはできなくなります。 毎会計年度、固定資産の価値がより高い状態で保たれることになれば、米国に投資するE-2ビザ企業の会計処理に大きな影響を与えることでしょう。当初、10万ドルの価値として減価償却が見込まれた固定資産は、減価償却が完了するまで、より高い価値を保持することになってしまうのです。 […]
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Eビザ保持者の永住権申請 : 長期間、米国を出国できない?
昨年、米国移民局は、永住権を申請するE-1/E-2ビザ保持者が、米国外への渡航が長期間できなくなる内容を発表しました。これは、E-1/E-2ビザ保持者である貿易家、投資家、従業員、その配偶者や子どもにも該当する内容です。 永住権申請の最終プロセスでは面接が実施されますが、その面接を米国で受ける方法を在留資格/ステータス変更 (Adjustment of Status/AOS)といいます。E-1/E-2ビザ保持者がこのAOSを選択した場合、米国移民局より渡航許可証 (Advance Parole/AP) が発給されるまで、米国外への渡航ができなくなります。以前は、AOS申請から3~4ヶ月ほどで渡航許可証が発給されていましたから、米国内に足止めされても、比較的、許容範囲内のものでした。 ところが、米国移民局は昨年、労働許可証の発給プロセスに注力すると発表、これにより、渡航許可証が発給されるまで、実に1年近くも掛かることになり、プロセスが劇的に延長されたのです。中には、渡航許可証が発給される前にグリーンカードが発給されるケースもしばしば見られるほどで、これでは、渡航許可証を申請する意味が全くありません。 「米国外への渡航ができない」ということは、自由に海外旅行へ行けないというだけではなく、申請者が勤める企業側にとっても、海外出張を自在に計画することができず、業務に支障をもたらすことにもつながります。 海外への渡航ができないE-1/E-2ビザ保持者は、どうにか米国を出国しようと試みるかもしれませんが、AOS申請中に米国を出国した場合、申請を放棄したと見做され、永住権申請そのものが却下されます。申請が却下されれば、申請者本人だけでなく、永住権申請をスポンサーしている企業にもリスクをもたらし、厳しい罰則の対象となりますので、くれぐれもご注意ください。なお、参考までにですが、LビザおよびHビザ保持者については、AOS申請中でも、自由に米国を出入国することができます。 米国当局のプロセスを変えることは出来ませんが、私たちは引き続き、当局の対応に翻弄される皆さんにとって、少しでも良い状況となるためのお手伝いをして参ります。そして、深刻な事態に陥ることのないよう、そのリスクを減らすための適切なアドバイスをいたします。ビジネス移民に関するご質問は、ぜひ当事務所までお問い合わせください。
米国移民局、就労ビザ申請に対する大幅な変更を提案
2023年の初めに連邦官報に掲載された規則制定への提案書によると、米国移民局は、申請料の大幅な値上げや、プレミアム・プロセッシングの審査期間の延長について提案している、とのことです。これが現実に施行されれば、従業員の就労ビザを申請する企業に、大きな影響を与えることは間違いありません。 提案されている新申請料は、様々な請願書やビザのタイプに適用されており、中には最大2,050%もの値上げとなるものもあります。申請料の大幅な値上げにより、審査に掛かる時間を改善したり、米国移民局の職員がより良いサービスを提供できるようになる、と示唆していますが、残念ながら、米国移民局はこれまでにも同じ目標を幾度となく掲げてきましたが、 過去34年間、一度も達成されたことはありません。 現在、提案されている申請料の概要は以下のとおりです: Form I-129請願書の申請費用 ビザクラス 提案されている申請料 値上がり率 H-1B/H-1B1 $460 から $780へ 70% 増 H-1B 申請登録 $10 から$215へ 2,050%増 L-1 $460 から$1,385へ 201%増 E-1/E-2 $460 から$1,015へ 121%増 TN $460 から$1,015へ 121%増 […]
TN-2 ビザステッカーの有効期間が最長4 年へ
メキシコ国籍の方々、または、将来的に TN-2 ビザの取得を望む方々への重要なアップデートがありました。北米自由貿易協定(現在の米国・メキシコ・カナダ協定)によると、メキシコ国民へ発給されるTN-2ビザステッカーの有効期間は1年しか認められていませんでしたが、このたび、米国国務省がReciprocity Chart(相互関係表)を修正したことにより、最長4年間有効のビザステッカーが発給されるようになったのです。 メキシコ国籍の申請者は、この4年間有効のTN-2ビザステッカーを取得する際、合計382ドルの手数料を支払うことになりますが、以前は、1年しか期間のないビザステッカーを申請する毎に104ドルを支払っていましたから、いくらかは割安になる計算です。何よりも、このビザステッカーを持つメキシコ国民は、4年間、米国を自由に出入国出来るようになりますので、大変有益な変更となりました。ただし、TN-2ビザステッカーの期間は4年あっても、TN-2ビザステータスとして米国内で就労できるのは最長3年で、3年後にはForm I-94を延長または更新する必要がありますので、ご注意下さい。 今回の変更による最も重要なポイントは、米国税関・国境警備局(USCBP)の審査官がForm I-94の有効期間を誤って発給してしまう件数を減らす点にあります。これまで、TN-1ビザのカナダ国民には3年間有効のForm I-94を概ね発給するのに対し、メキシコ国民には、3年間有効のForm I-94を同様に発給すべきところ、TN-2ビザステッカーの有効期間に倣って、Form I-94の有効期間も1年しか発給しない事例が頻繁に起きていたのです。 新たなルール下のTN-2ビザステッカーを取得しましたら、ビザステッカーが有効なうちに、国境にある米国税関・国境警備局の事務所にて、Form I-94の発給を申請して下さい。この時点で、3年間有効のForm I-94が発給されますが、それはすなわち、その3年間、合法的に米国内に滞在、就労することが認められていることを意味します。一方、TN-2ビザステッカーは4年の有効期間がありますから、その間、メキシコと米国を自由に往来することが可能となり、今後はもはや、毎年ビザステッカーの更新を心配したり、新たなビザステッカーを取得するために面接を受ける手間が不要となりました。 米国で働き、生活を営みたいメキシコ国民にとって、今回の変更は、今までと比べてはるかに自由で柔軟性のある内容となりました。その上、I-94の有効期限が誤って短い期間で発給されたことに気づかず、うっかり滞在資格を失いかねないような事態に見舞われるリスクも大幅に軽減されますから、大変喜ばしい限りです。 こちらの手続きについて、あるいは、滞在資格に関するその他のご質問については、ブランドン・バルボ法律事務所までお気軽にお問い合わせください。
パスポートへの入国スタンプの廃止
近年、米国税関・国境警備局 (USCBP) は、従来のプロセスを度々変更しており、合法的に滞在する外国人に影響を与えています。当局は有益化、合理化のための変更と謳っていますが、変更があればあるほど、混乱やリスクをより高めているのが実情です。とりわけ、米国で一定期間のみ滞在出来る外国人に大いなる影響を与えるものが、最近発表された「入国スタンプの廃止」です。 かつては、米国に入国する際には、入国審査官がハードコピー(紙状)のForm I-94を発給し、外国人のパスポート上に入国スタンプを押印していました。そして、2013年には、紙状のForm I-94は廃止、代わりに電子化され、外国人のパスポート上には、ビザクラスと、許可された滞在期限が記載されている入国スタンプが押印されるようになりました。このプロセスであれば、まだ、ステータスや滞在期限が目視出来るため、混乱を最小限に留めることが出来ていました。 しかし、最近、USCBPは、紙状のForm I-94の廃止だけに止まらず、入国時の効率化と称し、入国スタンプの押印をも廃止する、と発表しました。つまり、今後は、パスポートにある入国スタンプを見て、自身のステータスや滞在期限を把握、確認することが出来なくなります。そのため、これまで以上に、自己責任でステータスを管理していかなければならなくなるのです。 Form I-94を今すぐダウンロードしましょう 今後は、米国に入国次第、USCBPのウェブサイトからForm I-94を必ずダウンロードしてください。このForm I-94には、ビザクラス、滞在期限など、外国人が米国で滞在する上で必要な情報が全て記載されています。ダウンロードしたForm I-94は印刷し、いつでも確認できるよう、身近で安全な場所に保管しておきましょう。こうしておけば、滞在期限がいつまでか、要らぬ不安や混乱を防ぐことが出来ますし、米国でのステータスを問われた際にも、すぐに提示することも出来ます。 また、Form I-94に誤りがあることに気づいた場合は、USCBP Deferred Inspection Sites に連絡し、直ちに訂正してもらってください。多くの場合、全てメールを介して訂正することが出来ます。 ブランドン・バルボ法律事務所は、米国へ渡航する外国人や、移民の方々に大いに影響を与える、米国当局によるポリシー、ルール、プロセスに関する変更について、常に目を配り、細心の注意を払っています。こうした変更により、ご自身のステータスについて疑問や不安のある方は、米国移民法の専門家である弊社まで、是非、お気軽にお問合せください。
前例にないほどの大幅な遅延に悩まされるグリーンカードの更新手続き
米国の移民制度上、必要不可欠な役割を担うグリーンカード。これは、合法的な永住者であることを証明する書類で、多くの場合は、10年ごとに更新する必要があります。ところが、現在、この更新手続きが完了するまでに、1年以上、最近のケースでは2年以上も掛かるという大幅な遅延が起きています。 米国移民局 (USCIS) は、この深刻な遅れに影響を受ける人々を救うための新たな措置として、2022年9月26日より、Form I-90 (グリーンカード更新用の申請書類) の提出後に発行されるReceipt Notice (受領通知書 / Form I-797) があれば、手元にあるグリーンカードの有効期限は24か月延長される、と発表しました。旧ルールでは12ヶ月の延長しか認められていませんでしたので、ある程度は状況が改善したことにはなります。 そもそもグリーンカードの更新は、有効期限の6カ月前からしか申請できません。「24カ月延長措置」が取られる前の旧ルール下では、グリーンカードの有効期限が12か月延長されているにも関わらず、期限内に新たなグリーンカードが発給されず、深刻な状況に陥る永住者が多数いたのです。このたびの「24カ月延長措置」は、合法的に居住する永住者を守るために、絶対的に必要な措置が取られた、ということですが、逆に言えば、「24カ月もの期間をもってすれば、更新が完了するだろう」と言っているようなもので、永住者を危険にさらすほどの大幅な遅延が起きていることには変わりありません。 ところで、大きな頭痛の種となっているのは、更新手続きの遅延だけではありません。移民局の緊急アポイントメントのための予約システムもまた然りです。この緊急アポは、例えば、新たなグリーンカードの発給がどうしても必要な場合などに利用しますが、こうした状況下にある申請者はよく、弁護士に相談しに来られます。相談を受けた弁護士は、移民局のコンタクトセンターに連絡しますが、予約の確保は、なかなか簡単には行きません。なぜなら、単に担当者と話すだけでも数日掛かることがあるためです。メッセージを残せたり、電話を折り返してもらえるシステムはありませんから、担当者に繋がるまで、ひたすら電話を掛け続けるしかありません。そして、ようやく担当者と話せても、最後には「予約を完了するため、移民局から確認の電話連絡がある」と言われます。この確認電話は、掛かってくるまでに数時間から数日を要し、いつ掛かってくるか、全く予測出来ません。万一、電話を受け損ねれば、コンタクトセンターに連絡をするところからやり直しになってしまうのです。 このような非効率極まりないシステムを変えるには、政治家の力を借りるしかないのかもしれません。もしも、皆さんご自身や、身の回りの大切な方がこのような目に遭った時には、地元の政治家に、遅々として進まないプロセスや、頭の痛くなるようなシステムのために、罪のない永住者のステータスがいかに危険にさらされているかを訴えるべきです。 私たちは、米国政府のシステムそのものを変えることは出来ませんが、こうしたプロセスやシステムを熟知していますので、より簡単に、より効率良く進めるため、全力を注いでいます。グリーンカードの申請や更新でお困りの方は、ブランドン・バルボ法律事務所までお気軽にお問い合わせください。
政治が移民情勢に与えるインパクト
私たちは米国移民法の専門家として、米国ビザの取得や米国への移住にまつわる権利について、皆さんに知って頂き、理解して頂くための努力を惜しみません。特に、法律、基準、規制に関する重要な変更点には、常に細心の注意を払い、弊社のブログを通して、権利はもちろん、米国での生活、労働、成功を守るために有益な情報をお届けしています。 近年、従来の基準に対して、企業や個人に迅速な対応が求められる、急激な変更が多々ありました。これらの多くは、政治的な動機や、少なくとも、どの政党が特定の行政機関を司っているかが背景にあるように見受けられます。このように、移民の権利を知り、理解するためには、政治が移民情勢にいかに深く関わっているかを理解することはとても重要なのです。 両極端な政治の立場 今なお続く移民の権利をめぐる議論は、文化戦争(自由主義対保守主義の価値観の衝突)問題で争う民主党と共和党が、左派・右派からの支持を得ようと躍起になる限り、早々に決着を見ることはないでしょう。 通常、対極にある意見は互いに押し合い、結果的に中間に位置する政策に落ち着くことが多いものですが、その中にあっても、左寄りの民主党政権下では、移民や、米国への出入国には、より寛容になり、右寄りの共和党政権下では、移民法の文言に従うだけでなく、その文言の定義をより厳しく制約する傾向にあります。 すなわち、米国の選挙報道を追うことは、今後の移民情勢を予測する上で大変役立ちます。左派・右派どちらにも長所と短所がありますが、自分自身、家族、そして地域社会にとって、どのような結果が好ましいのか。―米国市民となり、選挙権を得た暁には、皆さんそれぞれにその判断が委ねられています。 移民が増えれば票が増える・・・どの党に? 移民そのものが政治に影響を及ぼし、それがまた移民に影響を及ぼします。選挙では、自身の関心事や暮らしについて、最も優遇してくれる人物や政党に投票するのが一般的ですが、それでは、米国市民となり選挙権を得た移民の人々はどうでしょうか。 数々の論文や研究内容が指摘するところによれば、移民がより多ければ、民主党への票がより増える、としています。その理由は、前述したように、民主党は米国移民法に対し、より寛大な姿勢を示す傾向があるためです。 家族や友人もまた米国に移住できるよう願う移民であれば、この寛大な姿勢を好み、民主党に投票するかもしれません。ですが、すべての移民が一括りで同じように考えているわけではありません。一方では、移民寄りの寛大な政策には捉われず、自分自身も含めて、米国内で暮らす人々や地域社会への安全や秩序を優先する政策を好む移民も数多くいます。つまり、移民=民主党、という単純な図式は成り立たず、どちらの政党に移民の票がより多く集まるかは、その時々の移民の考え方によって左右されているのです。 移民として、申請者として、米国政治を理解すべき? 米国の政治について軽く触れましたが、米国の政治体制は大変複雑で、頻繁に変化しますし、時には隣国との関係に深刻な影響を及ぼすことさえあります。選挙や政治の制度を完全に理解することは、生涯米国人であっても非常に難しいものです。 市民権を申請する際、帰化試験のために、米国の政治体制をある程度知っておく必要はありますが、複雑な政治体制のすべてを完全に理解する必要や義務はありません。しかしながら、誰が政権を執っているか、誰が政権を執る可能性があるか、そして、それがどのように移民に影響を与えるかなど、より多くの知識や情報を得ることは、移民としての権利を知り、そして今の生活を守るための最善策でもあることを覚えておいて下さい。 ブランドン・バルボ法律事務所では、規則、規制に関する新たな変更など、米国での滞在に影響し得る情報をご案内しています。これから米国で生活を始める方、或いは、今の生活を続ける上で、移民法に関して不安や疑問に思う方は、どうぞ、お気軽にお問合せください。
永住権申請の大幅な遅れ ―政府関係者が勧める“在留資格/ステータス変更”
新型コロナウイルスが与える影響は、世界中で今なお見受けられますが、米国への移民事情もまた例外ではありません。2020年当時、米国や他国で感染が爆発的に拡大した際、特定の米国政府機関やその業務が数か月間停止しましたが、それが歴史的な移民ビザ発給のバックログをもたらすことになりました。 現在、ナショナル・ビザ・センターにおける移民ビザの申請件数は、プロセスが滞ったことから、実に数十万件にも膨れ上がっています。プロセスが進まないため、多くの方々が身動きを取れず、その結果、2021年には発給されていたであろうグリーンカードが数万枚も無駄になりました。この事態を受け、米国政府関係者は、永住権の申請者に対し、母国の大使館・領事館で移民ビザの面接を受けるのではなく、米国内で面接を受けるよう、推奨し始めました。 在留資格/ステータス変更 (Adjustment of Status/AOS) と移民ビザ申請 (Consular Processing/CP) 以前のブログでもお伝えした内容ですが、バックログ解消の必要性に伴い、この問題がよりクローズアップされてきています。永住権申請プロセスの最終局面で実施される面接は、面接地を米国か、母国かで選択することが出来ます。 米国で面接を受ける方法を在留資格/ステータス変更 (Adjustment of Status/AOS) 、母国で面接を受ける方法を移民ビザ申請 (Consular Processing/CP)といいますが、現在、遅れが出ているののは、AOSではなくCP、すなわち、母国にある米国大使館での面接を選択した方々に関わるプロセスです。 つまり、米国内にある米国移民局で面接を受ければ、比較的早くプロセスを進めることが出来ることになりますが、AOSで申請するためには、まず第一に、申請者は合法的に米国に滞在していなくてはなりません。 バックログの解消には数年かかる? この歴史的なバックログは、一夜にして解消されるものではありません。たとえ、何千人もの申請者がAOSを選択したとしても、手続きを待つ移民ビザの申請書は山ほどあり、2022年7月現在、母国の米国大使館での面接が設定されるのを待つ外国人申請者は40万人以上に上ります。 審査官が1カ月に対応できる面接の数は限られていますし、その上、日に日に新たな申請者が追加されていくわけですから、このバックログが解消されるには何年もかかるでしょう。出来るだけ多くの申請者がAOSを選択し、米国移民局が精力的にプロセスを進めていかなければ、この問題は益々深刻化する一方なのです。 AOSが出来る人、出来ない人 AOSを選べば、永住権申請のプロセスは早く進みますが、誰しもがAOSを選択できるわけではありません。オーバーステイや不法就労などのステータス違反があり、それが発覚した場合、申請そのものが却下されるだけでなく、より深刻な事態を招く危険性もあるのです。 唯一、朗報と言えるのは、移民国籍法245条 (k) によれば、雇用主がスポンサーとなる、雇用ベースの永住権申請の場合、軽度のステータス違反があったとしても、申請者は合法的に米国内で面接を受けることが出来る、としています。免除されるステータス違反は、以下のとおりです; – 合法的なステータスを維持できなかった日数が180日以内である場合 – 不法就労の日数が180日以内である場合 – その他、ビザステータスへの資格や条件に対し、違反した日数が180日以内である場合 […]
郵送によるビザ更新のすすめ
COVIDによるパンデミックの影響から、東京の米国大使館と駐大阪・神戸米国総領事館は、ビザの更新を郵送で受け付けるようになりました。これは、申請者と領事館職員をウイルス感染から守ると同時に、ビザ更新のための手続きを速やかに完了させることを目的としています。 大使館・領事館が、ビザ更新の申請者に対し、郵送申請を依然強く推奨していることから、郵送申請はパンデミック時だけの特別措置ではなく、今後も継続されることが予想されます。郵送でビザの更新が完了、すなわち、面接が免除されるわけですから、申請者にとっても、手続きが容易になり、大いにメリットのある措置と言えます。 郵送申請への資格要件 大変便利な郵送申請ですが、誰でも利用できるわけではなく、大使館・領事館が掲げる、すべての要件を満たしていなければなりません。 まず、第一に、申請者は日本に滞在していること、です。つまり、アメリカや他の国からでは手続きは出来ず、日本に物理的に滞在しながら、申請書類を郵送しなくてはなりません。大使館・領事館は、申請者のパスポートにある日本への入国スタンプを確認するなど、不正がないかどうかを確認しています。万一、不正と見做されれば、申請自体を危険にさらすことになりますので、くれぐれもご留意ください。 第二に、郵送申請を利用できるのは、以下のビザクラスの保持者のみです。: B1/B2 C1/D E H I J O P Q L (注:L-1ブランケットビザ保持者は郵送での更新はできません) L-1ブランケットビザ保持者は、大使館・領事館で改めて面接を受け、更新手続きを完了させる必要があります。一方、ブランケットではないL-1ビザ保持者は、郵送による更新申請が認められています。 なお、以上はビザを更新する場合ですが、他にも郵送申請を受け付けている例があります。一般的に14歳未満または80歳以上の申請者は、以前より面接が免除されていますし、2022年12月31日までの限定期間ですが、Fビザ、Mビザ、Jビザを申請する日本国籍の申請者も、一定の要件を満たしていれば、郵送によるビザ申請が認められています。 例外について 郵送申請への要件をすべて満たしていても、郵送された申請書類の内容次第では、結果的に面接に来るよう指示されることがあります。よくある理由としては、更新申請の場合、前回の申請から数年が経過していることが多く、現在のポジションや仕事内容、会社の状況など、そのビザクラスに必要な要件を引き続き満たしているかどうかを確認する場合です。 もし、米国でのポジションや会社組織などに大きな変更があった場合は、郵送による更新申請ではなく、最初から面接を受けたほうが良いかもしれません。 その他の例外は以下の通りです。 2011年3月1日以降に、イラン、イラク、北朝鮮、スーダン、シリア、リビア、ソマリア、イエメンに渡航したことがある人 イラン、イラク、北朝鮮、スーダン、シリアの国籍を持つ人 日本だけでなく、どこの国でも、逮捕されたことのある人 郵送申請への要件や手続きの詳細に関しては、こちらをご参照ください。大使館・領事館は、「申請者がきちんと要件を理解した上で郵送申請をしているもの」と考えますから、気づかなかった、知らなかった、は通用しません。後々、思わぬトラブルに陥らないよう、資格要件は必ずきちんと把握しましょう。 米国移民法のエキスパート、ブランドン・バルボ法律事務所は、ビザ申請のプロセスがスムーズに進むためのお手伝いをしています。上記内容について、ご質問があるようでしたら、いつでも、お気軽にお問い合わせください。
グレースピリオド ― 60日間の出国猶予期間
米国で新たな生活を始めるためには、ビザの取得など多大なる労力を要します。長い道のりを経て、プロセスが無事に完了した暁には、「ようやく米国での新たなキャリア、新たな生活が始められる」と、安堵することでしょう。 しかし、よくよく練られたプランでも、残念ながら、常に期待通りに物事が進むとは限りません。例えば、従業員が新たなチャンスを求めて退職するのと同じように、雇用主はいつでも従業員を解雇することができるわけですから、決して雇用の安定は保証されていません。そこで、今回は、万一解雇された場合、すぐに米国を出国しなくてはならないのかどうか、知っておくべき重要なポイントについて述べてまいります。 2017年1月より、米国移民局はほとんどの就労ビザ保持者に対し、「グレースピリオド」という、60日間の出国猶予期間を認めるようになりました。これは、雇用が終了した瞬間にステータス違反とならないよう、ビザ保持者を保護する目的で設けられた措置です。よって、解雇=即出国、とパニックに陥る必要はありません。 対象となるビザクラス この60日間のグレースピリオドは、全てのクラスの就労ビザ保持者に与えられるものではありません。雇用終了後、短期間の猶予しか与えられないビザクラスもありますので、まずはご自身が60日間猶予の対象であるか、確認してください。 60日間のグレースピリオドが認められている就労ビザクラスは以下のとおりで、H-2B、H-3、P のビザ保持者には 60 日の猶予期間は認められていませんので、ご留意ください。 – E-1、E-2、E-3 – H-1B、H-1B1 – L-1 – O-1 – TN グレースピリオドは、認められた期間につき一度だけ利用することが出来ます。例えば、現在のビザクラスのステータスを延長するためにグレースピリオドを利用した場合、いずれは出国し、改めて入国しない限りは、新たなグレースピリオドの付与対象とはなりません。また、グレースピリオド中に米国を出国した場合は、残りの日数に関わらず、猶予期間は終了します。 ところで、グレースピリオドの期間中に、Form I-94 やForm I-797 が失効する場合は、猶予期間は60日間ではありませんので、ご注意ください。例えば、Form I-94 やForm I-797の有効期限日が、雇用終了日から15日後であった場合、猶予期間は60日間ではなく15日間となり、その間にステータスの延長や変更申請、または米国から出国しなくてはなりません。 グレースピリオドの要件 グレースピリオド中も、合法的に滞在することはできますが、米国移民局によって認められていない就労はできません。そもそもグレースピリオドとは、新たな雇用の確保、ステータス延長や変更申請の準備等のために与えられている期間です。よって、60日の間に、以下のいずれかのアクションを起こす必要があり、グレースピリオドの期間終了までにアクションを起こさなかった場合は、ステータスは取り消され、米国に滞在する資格を失います。 新たな雇用主の元で就労するための申請をする 猶予期間が終了する前に、米国から出国する計画を立てる […]