労働認定証申請 (PERM)を経て、米国永住権を取得するためには、求人活動からグリーンカード取得まで、全部で4つのステップがあります。
- 求人活動
- Form ETA 9089 (労働認定証の申請書) の申請
- Form I-140 (移民ビザ/永住権の請願書) の申請
- Form I-485 (在留資格/ステータス変更の申請書) の申請、もしくは、在外米国大使館での移民ビザの申請
ステップ 1: 求人活動
労働認定証申請 (PERM) の規定上、スポンサーとなる雇用主は、申請者の、永住権取得後に勤務地となるエリアにおいて、以下の求人活動を行わなければなりません。
- 米国労働省から「適正な給与額の算定 (PWD)」を入手。PWDには、永住権取得後に申請者が受け取らなければならない最低賃金が算出されている。
- 申請者の勤務地となるエリア全域をカバーする新聞の日曜版に、2度、求人広告を出す。
- 申請者の勤務地となる職場に、10営業日連続で、雇用情報を掲示する。
- 申請者の勤務地となる州の労働局に、求人広告を30日間、掲載する。
もし、申請者の役職が、米国労働省の定める専門家に該当する場合は、次の10項目のうち、3項目のプロセスを付け加えなければなりません。
- ジョブフェアでのリクルート活動
- 雇用主のウェブサイトでの求人情報の記載
- 雇用主のウェブサイトとは異なる、求人求職用のウェブサイトへの求人広告の掲載
- 大学でのリクルート活動
- 申請者の役職に関連する専門誌、業界紙への求人広告の掲載
- 民間の人材派遣会社での求人掲載
- 大学の就職活動オフィスでの求人広告の掲載
- 雇用主の社内推薦の告知
- 申請者の勤務地となるエリアで配布されるローカルもしくは民族新聞への求人広告の掲載
- ラジオやテレビでの求人告知
ステップ 2: Form ETA 9089 (労働認定証の申請書) の申請
一連の求人活動終了後、雇用主は、Permanent Employment Certification (永久雇用証明証) となる、Form ETA 9089を米国労働省にオンライン経由で提出します。この申請書類を提出した日が、申請者の「Priority Date」となります。米国永住権は年間発行数に限りがあり、その申請者に、いつ移民ビザ番号が割り当てられるか、それぞれの優先枠の中で順位を決めるために用いられるのがPriority Dateです。
Form ETA 9089の審査中、米国労働省が監査措置を取りたい場合には、監査用に要求した書類を30日以内に提出するよう、雇用主に通知が届きます。監査用の書類が受領され次第、引き続き審査は進められますが、期限内に書類を提出しなかった場合は、Form ETA 9089が却下されます。その場合、スポンサーとなる雇用主は、米国労働省よりペナルティを受ける可能性もあります。
審査で承認されると、米国労働省より労働認定証 (Certified Form ETA 9089) が発行されます。こちらを受領後、労働認定証の有効期間内 (発行日から180日以内) に、雇用主はForm I-140 (移民ビザ/永住権の請願書) と付随する証拠書類を米国移民局に提出しなければなりません。
ステップ 3: Form I-140 (移民ビザ/永住権の請願書) の申請
Form I-140と付随する証拠書類を米国移民局に提出しますが、その際、申請者の国籍と移民ビザの優先枠によっては、Form I-140とForm I-485 (ステップ 4) を同時に申請することが可能です。 これは、Combined Processing (同時手続き) と呼ばれるもので、下記、Form I-485 (在留資格/ステータス変更の申請書) の申請の箇所でさらに詳しく説明します。
重要点 – 特急申請 (Premium Processing) によるForm I-140申請
米国移民局には、追加費用が別途かかりますが、Premium Processingという特急申請のオプションがあります。Form I-140の申請書類が受理された日から、15日以内に手続きされるため、手続きにかかる期間を大幅に短縮することができます。
重要点 – 雇用主の賃金支払い能力
Form I-140の審査での重要なポイントは、スポンサーとなる雇用主に、Form I-140上に記載される、申請者へオファーする賃金を支払える能力があるかどうか、です。なお、申請者が永住権の発行を受けるまで、Form I-140上に記載の賃金を支払う義務はありません。
スポンサーとなる雇用主は、オファー賃金への支払い能力があることを裏付ける証拠書類として、その法人単独の税務申告書、年次報告書、または監査済み財務諸表のコピーを提出しなくてはなりません。そして、以下の条件のうち、ひとつでも満たしていれば、オファー賃金への支払い能力があるとみなされます。
- 申請者が、スポンサーとなる雇用主にすでに雇用されており、少なくともForm I-140上に記載の賃金が支払われていること。
- スポンサーとなる雇用主の純利益が、Form I-140上に記載の賃金の額を超えていること。
- スポンサーとなる雇用主の純流動資産が、Form I-140上に記載の賃金の額を超えていること。
スポンサーとなる雇用主は、Priority Dateが確立した日、すなわち、Form ETA 9089を提出した日から、申請者が永住権の発行を受けるまで、オファーした賃金への支払い能力があることを証明する義務があります。
重要点 – Priority Date (優先日)
米国労働省にForm ETA 9089 (労働認定証の申請書) を提出した日が、その申請者のPriority Dateとなります。Priority Dateは、雇用ベースによる永住権申請の各優先枠の中で、永住権取得への順番を決定づける、重要な日付でもあります。また、永住権取得への順番は、Priority Dateの日付のほか、その申請者の国籍ではなく、出生地によって割り当てられています。例えば、雇用ベース第二優先枠 (EB-2) の申請者で、日本のパスポートを所持しているけれども、出生地がインドの場合、インド用の第二優先枠としてみなされます。
現在の永住権割り当てシステムでは、Form I-140が承認されても、申請者のPriority Dateの日付が直近になるまで、次のステップの申請書類を提出できないため、待ち時間が生じることになります。
重要点 – Priority Date のチェック
米国国務省は、毎月中旬に、移民ビザ (永住権) の発行可能状況を示す、Visa Bulletinというチャートを発表しています。永住権は、法律で定められた年間発行数の中で、Priority Dateの順に応じて、割り当てられていきます。
移民および国籍法 (INA) 第201条によると、雇用ベースによる永住権発行数は、年間14万人までに制限されています。また、移民および国籍法 (INA) 第202条によると、各国からの移民受け入れは、家族ベースと雇用ベースを併せた、永住権の年間発行数の合計に対し、7% (25,620人) まで、と定められています。
例えば、もし、その優先枠での永住権の供給数に対して、申請者の数のほうが上回ってしまった場合、Visa Bulletin上で、その申請者のPriority Dateが永住権発行可能と示唆されるまで永住権は発行されない、ということになります。Visa Bulletin上では、各優先枠ごとに日付が表示されていますが、この日付をCut-Off Dateと言い、この日付と同日もしくはそれ以前の日付のPriority Dateを持つ申請者のみ、永住権の割り当てが可能となります。
もし、Visa Bulletin上で、日付ではなく「C」と表示されている場合、これはCurrentを意味し、その優先枠の申請者には、現在、永住権の割り当てが可能、という意味になります。逆に、「U」と表示されている場合、これはUnavailableを意味しますので、永住権の割り当ては現在不可能、という意味になります。
永住権の割り当ては、先にも述べたように、その申請者の国籍も大きく関与します。申請者の国籍が中国、インド、メキシコ、フィリピンの場合、これらの国々は、永住権の供給数に対し、申請者の数のほうが常に大幅に上回っているため、ステップ4 (最終ステップ) へ進むまでの待ち時間が長い傾向にあります。
Form I-140 (移民ビザ/永住権の請願書)の承認
米国移民局は、Form I-140を承認次第、Form I-797という承認書を発行します。Form I-140が承認され、その申請者のPriority Dateが直近になり次第、ステップ4 (最終ステップ) へと進むことができるようになりますが、申請方法として、米国内で在留資格/ステータスを変更するか (Adjustment of Status)、在外米国大使館で移民ビザの面接を受けるか (Consular Processing)、いずれかの方法を選択しなくてはなりません。
ステップ 4: Form I-485 (在留資格/ステータス変更の申請書) の申請 (オプション1)
Form I-140が承認されている、Priority Dateが直近である、そして、米国内に合法的に滞在している—これらの条件を満たしている申請者で、米国内に留まりながら、非移民ビザから移民ビザ (永住権) へと在留資格/ステータスを変更したい場合は、Form I-485を米国移民局へ申請します。その際、申請者の家族 (配偶者と21歳未満の未婚の子供) も米国への移住を希望するのであれば、申請者とともにForm I-485を申請することができます。なお、すべての申請者は健康診断を提出しなくてはなりませんし、14歳以上のすべての申請者は、指紋採取を受け、FBI (米国連邦捜査局) の身元調査を受けなければなりません。
重要点 – 在留資格/ステータス変更 (Adjustment of Status) 申請中の海外渡航と就労について
Form I-485を申請する際、申請者本人とその家族は、米国での就労が認められる「労働許可証 (EAD) 」と、海外への渡航が認められる「渡航許可証 (AP) 」を一緒に申請することができます。米国移民局は、「労働許可証 (EAD) 」と「渡航許可証 (AP) 」をひとつに合わせた、コンボカードと呼ばれるカードを発行します。
非移民ビザの有効期限前までにForm I-485を申請していれば、「In-Status」とみなされ、非移民ビザの有効期限を過ぎても、米国内に合法的に滞在することができます。ただし、就労については、非移民ビザの有効期限までとなりますので、就労できない期間を避けるためにも、コンボカードへの申請書類は、Form I-485とともに提出するべきです。
Form I-485を申請後、H-1もしくはL-1の有効なビザステッカーをお持ちの方以外は、「渡航許可証 (AP) 」が発行されるまで、米国を出国できなくなります。というのも、「渡航許可証 (AP) 」の発行、取得を待たずに米国を出国しますと、米国へ再入国できなくなるからです。よって、H-1もしくはL-1の有効なビザステッカーをお持ちでない方にとって、「渡航許可証 (AP) 」は、大変重要な書類となります。
H-1もしくはL-1以外の、すべての非移民ビザの方は、米国を出国する前に「渡航許可証 (AP) 」を取得することが、とても重要であることを述べました。一方、有効なH-1ビザもしくはL-1ビザをお持ちの方の場合ですが、ビザのスポンサー会社で変わらずに雇用されており、なおかつビザステッカーが有効である限り、「渡航許可証 (AP) 」の発行を待たずとも、米国外へ渡航することができます。また、H-4ビザもしくはL-2ビザといった帯同家族においても同様で、ビザステッカーが有効である限り、米国外へ渡航することが認められています。
重要点 – FBI (米国連邦捜査局) の身元調査によるプロセスの遅れについて
先にも述べましたように、14歳以上のすべての申請者は、FBIの身元調査を受けなければなりません。この身元調査にかかる期間は、個々人まちまちで、即完了する場合もあれば、数ヶ月、ひいては長期に及ぶ場合もあります。こちらの身元調査が完了しない限り、Form I-485の審査も完了できないため、身元調査に時間がかかれば、その分、Form I-485の審査も遅れることになります。米国移民局より、FBIの身元調査を受ける必要のある申請者全員に、指紋採取のアポイントメント通知が発行されますので、指定された日時に、指定されたApplication Support Centerへお出かけの上、指紋採取を完了してください。
重要点 – 米国移民局での面接実施によるプロセスの遅れについて
2017年10月1日より、雇用ベースによる永住権申請の場合、申請者とその家族は全員、米国移民局の現地管轄オフィスにて面接を受けることが義務化されました。以前のように、面接免除の措置はなくなりましたので、ご注意ください。すべての申請者に面接が実施されるため、Form I-485の審査が完了するまでに相当な時間を要する、すなわち、永住権取得までの時間も長引く、ということになります。
重要点 – 在留資格/ステータス変更 (Adjustment of Status) 申請中の雇用主変更
2000年秋に制定されたAC 21 (American Competitiveness in the Twenty First-Century Act) という条例が画期的な変化をもたらせ、特定の状況下において、申請者は永住権のスポンサーとなる雇用主を変更し、新しいスポンサーを通して永住権を取得することができるようになりました。
以下の3つの条件を満たす申請者は、AC 21の適応者となります。
- 米国移民局よりForm I-140の承認を得ている。
- Form I-485を申請してから、180日が経過している。
- 新たにスポンサーとなる雇用主の下での職務が、Form I-140上で記載した職務と同等もしくは似ていること。
ただし、米国移民局は、AC 21の適応について、非常に具体的なルールを設けていますので、スポンサーとなる雇用主を変更したい場合は、必ず事前に、移民弁護士に相談されることを強くお勧めいたします。
Form I-485 (在留資格/ステータス変更の申請書)の承認
米国移民局は、Form I-485を承認次第、Form I-797という承認書を発行します。そして、Form I-551いわゆるグリーンカードを作成し、申請者へ発送します。
ステップ 4: 在外米国大使館での移民ビザ面接 (Consular Processing) の申請 (オプション2)
ステップ4でのもう一方の申請方法が、在外米国大使館で移民ビザの面接を受ける方法です。ステップ4で、在留資格/ステータス変更 (Adjustment of Status) (オプション1) を選択した申請者は、米国内で面接を受けるのに対し、移民ビザ面接 (Consular Processing) (オプション2) を選択した申請者は、母国の在外米国大使館で面接を受けることになります。
移民ビザ面接 (Consular Processing) を選択すると、米国移民局はForm I-140の承認後、ケースファイルをNational Visa Center (NVC) へ転送します。ファイル受領後、NVCは、ファイル受領の通知を発行します。もし、その時点で、申請者のPriority Dateが直近でない場合は、Priority Dateが直近になるまでファイルを保管する旨が知らされます。
Priority Dateが直近になると、NVCは、移民ビザの申請費用に対する請求書を発行します。申請費用を受領次第、NVCは、移民ビザ申請に必要な申請書類を提出するための案内のほか、警察証明証 (犯罪履歴証明証)、ミリタリーレコード、婚姻証明証といった、提出しなければならない必要書類のリストを発行します。申請書類および必要書類を受領後、NVCは、ケースファイルを申請者の母国の在外米国大使館へ転送、そして移民ビザの面接日を確定します。
NVCからケースファイルを受領した在外米国大使館は、ケースに関するデータをトラッキングシステムに入力します。申請者は、面接に向けて母国へ戻り、事前に、在外米国大使館が指定する医師の下で、健康診断を受けなくてはなりません。
面接で承認されると、移民ビザが発給されます。申請者は、移民ビザの発行日から6ヶ月以内に、米国へ入国しなければなりません。もし、6ヶ月以内に米国へ入国しなかった場合、発給された移民ビザは無効となります。また、メインの申請者は、家族よりも前に入国するか、もしくは家族と同時に入国しなくてはなりません。
移民ビザ発給後、初めて米国へ入国する際、米国の国境または空港で、申請者は検閲され、移民ビザが有効か確認されます。移民ビザに押印される入国スタンプは、移民ビザが有効であること、そして、申請者は合法的に米国永住権保持者であることを示しています。グリーンカードは、その後、申請者の米国内の自宅まで郵送されます。